ワクチンの知識も必要

トラベルクリニックってどんなところ？

ワクチンの知識も必要

なぜ海外に渡航する場合はワクチンを接種しなければならないのでしょうか。ここでは様々な病気から身体を守るワクチンの必要性について詳しくまとめています。

感染リスクを下げるため

海外は日本とは生活環境が異なります。自分の身体を守るためにも事前にできる予防はしておくべきです。その予防策のひとつがワクチンの接種です。ですが、日本で受けられるワクチンの種類は限られていますし、必要なワクチンは1人ひとり違います。そのため、トラベルクリニックでは旅行者の渡航先や渡航機関、渡航形態、年齢や健康状態、これまでの予防接種歴と照らし合わせて必要なワクチンを決め、旅行者に受けるかどうかの判断を促します。

ワクチン接種を要求する国もある

入国時にワクチンの接種を要求する国もあります。特にアフリカの熱帯地域や南米の熱帯地域では黄熱の予防接種証明書の提出が義務付けられています。また、黄熱が流行している国から他国に入国する場合も予防接種の証明書の提示を求められる場合もあります。国によって証明書の提示の有無は異なるため、渡航する前に渡航先の在日大使館や近くの検疫所などで確認しておきましょう。

海外でかかる感染症の怖さ

海外で感染症にかかるとどうなるのか、ダンス好きが高じてアフリカのギニアを訪れたAさんの例を紹介します。
看護師のAさんはアフリカンダンスを学びに、働いていた病院を辞めてギニアに向かいました。熱帯地域ということもあり、渡航する前にトラベルクリニックを訪れ以前接種したことがある破傷風のワクチンを受けましたが副作用もあったことや、自分が感染するとは考えられなかったことからアフリカで流行しているマラリアの予防薬は飲みませんでした。マラリアはマラリア原虫という寄生虫を持った蚊に刺されて感染する病気です。Aさんは蚊に刺されないように虫よけスプレーで予防するなどして注意していました。
当初は1ヵ月滞在する予定でしたが、毎日が楽しく帰国を伸ばして4ヵ月ほどギニアに滞在していたそうです。帰国の1週間前、電気やガスが通っておらず、網戸や蚊帳もついていない施設に宿泊したところ、何ヵ所も蚊に刺されていましたが、現地の人は気にしていなかったためAさんも気にせずそのまま日本に帰国しました。
ところが、帰宅後、容態が急変したのです。蚊に刺された記憶があったためマラリアを疑い、空港の検疫所で紹介された病院で検査を受けたそうです。検査の結果、Aさんの血液中にいたのは、多臓器不全や脳症などを起こす可能性がある悪性マラリアと呼ばれるものでした。Aさんが病院に行った時点で赤血球の20％に寄生しており、意識障害が起こるなど重い状態だったそうです。抗マラリア薬のメフロンを服薬して経過を観察し1週間後には退院できましたが、事前に予防薬を飲んでいればこのような事態は防げたでしょう。

感染症の情報もチェックしておこう

予防接種といってもその種類は多種多様です。中には年に数回接種しなければならないものもあるため、ワクチンの知識がなければトラベルクリニックで働くのは難しいかもしれません。厚生労働省で発信している「海外感染症発生情報」では、現時点で流行している感染症がチェックできるのでそちらも参考にしながら、渡航先ごとに必要なワクチンの種類を覚えておくようにしましょう。

現在発生している感染症の情報を日付ごとに更新している厚生労働省のサイトです。